春の山菜採りに始まって、野菜や梅、魚などを置いたり、干したり。
竹籠はプラスチック製品が普及する前に、一年を通して生活に根付いていた道具です。工芸品ではない道具。熊本県水俣市には今でもそんな暮らしの道具を育む土壌があります。
生活道具…と作り手の井上克彦さんはおっしゃいますが、この竹籠のように井上さんの手仕事はとても緻密で編み目が美しく、佇まいが良い。
楕円のかたちは、食卓でパンや果物を盛ったりと様々な使い方ができそうです。裏側は細い丸竹を半分に切って脚付きにしていますので、すっきりしています。
井上さんは、もともとは関東のご出身ですが、若い頃、世界を旅して水俣へたどり着きました。師となる竹細工職人と出逢い、竹という道具を通して日々の営みをつづっていきたい。この地で職人となることを決意し、20年以上が経ちました。
地元の住人から「こんな籠をつくってほしい」と依頼を受けると、それぞれの家庭、そして使い手ごとに合う道具に仕上げていきます。
籠は竹ひごを磨いて(包丁でこすって薄皮を削って、艶を出す)、編んでいきます。材料となる竹は、山から切り出した自然そのままのもので、染色など何ら人工的な処理を加えません。
青竹を使った竹籠は、完成した当初は青竹特有の淡い緑色を帯びています。編みたての竹は青々と輝き、そして時間とともに黄みを帯びて、やがて数年もすれば橙色に。更に数十年も経てば深く落ち着いた飴色へと、自然な艶を増していきます。
長く保つためには1年に1回程度、油を塗った手のひらで擦ってあげて。こうすることで、艶が増し、さらに竹が強くなっていきます。
暮らしの中でいろんな役にたつといいな。普通に使っていただければ、数世代にわたって働いてくれますよ。そう話す井上さんの穏やかなお人柄が現れた道具だと感じています。
【 ご購入時の注意 】
ひとつひとつ手仕事のため寸法はおおよそのものとお考えください。また、天然の竹を使用しているため、多少の折れやささくれ、色むら等がある場合がございますが、自然のものの表情として楽しんでいただければと思います。
ブラウザーやモニターなど閲覧環境によって実際の色と多少異なって見えてしまうこともございます。あらかじめご了承ください。
※ご購入前にご利用規約を必ずご確認の上ご購入お願いいたします。
※商品の交換、ご返品は一切お受けできません。
【 サイズ 】 約W30cm×D19㎝×H7.5cm
手づくりのため、サイズ表記は目安としてご確認ください。
【重量】170g
【 素材 】 青竹
【お手入れ 】
・汚れたときは水洗いして、風通しの良い場所でよく乾かしてください。
・年に一度程度、油を手につけて塗り込んでいただくとより長持ちします。
※もし壊れたりした場合は修理可能ですのでお問い合わせください。
<作り手について>
Katsuhiko Inoue 井上 克彦
生まれも育ちも都会っ子の井上さん。大学卒業後は商社に進むものの、ものづくりの道へ進みたいと全国を巡り、師となる渕上泰弘さんと出逢い、関東から水俣に移住、20年以上作り続けている。竹かごのある生活文化や知恵が絶えないよう、日々の営みを大切に綴っている。
<水俣の竹細工について>
水俣は海と山に恵まれています。山が海岸近くまで面していて多くは平野部の少ない山間地です。わずかな土地を利用する棚田や畑の耕作では大規模な農業経営は難しく、大型機械よりも手を使う「農具」としての竹籠が活躍する場面が大きいのでしょう。水俣では、新しくつくられたものだけでなく、修繕しながら漁や農作業、台所仕事で竹かごが使われ、職人もそれで生活できるという昔ながらの生活様式が今も根付いています。他地域ではイカダ底で編むことが多い中、水俣の底編みは何往復かして目を詰めていく技法が特徴。